3話

第7話

「明子のヒーローとか?」




「――…!」



男の子はそう言って、首を傾げる男子に「すみません」と笑った。


「あ」

その時、男子の携帯が鳴り。それに出て、話しながら「行こーぜ」と声をかけた男子がお祭りの方を指差した。

何だか私が呑み込めていない間に、男子たちはお祭りの方へ戻って行く。


「何か色々振り回してごめん長谷川さん。じゃ」

気まぐれに男子の中のクラスメイトの子が、しゃがんでいた私に向かって言ってそれについて行った。


わ、わざわざ謝ってくれた…。



呆然とする私の前に立っていた男の子は、私が顔を上げて見上げるより早くしゃがみこむ。



「明子!元気!?」


それから突然、パッとしっぽを振る子犬みたいにして私を覗き込む。



「……あ、え!?うそ…ひ、ろくん…!?」



そう。


見上げたそこにいたのは、少し幼い面影を残した『弘くん』だった。



私の思い出の中に、ずっと止まっていた弘くん。




「か、格好良く、なったね―…」


「え」



無意識のままに思わず口走ると、弘くんは表情を固まらせた。少しだけ頬が、紅く染まったような気がした。



弘くんだ…。


あの焦げ茶な髪、同じ色の眸。今は暗いから見えないけれど、きっと変わっていない。



でも、背が伸びてる。

声も少し低くなって、大人っぽくなって。


なのに優しくて強い雰囲気が、変わってない。



それに、未だにキラキラして見える――…。




「明子―…」


弘くんは、急にしゅんとした表情を見せた。

「?」



「今の、誰ですか?」


やっぱり懐かしくて、変な敬語になる弘くん。



「…えっ」



私は何故か、そう言った弘くんにドキッとした。

弘くん、本当格好良くなったから…。



「え、あの、クラスの人ですが」


「本当に?それだけ?」



「う、うんうん」



「そっかー…」


弘くんは、何故か心配そうな溜め息をついた。

「?」


しゃがんで近い弘くんの髪は、夜風に吹かれている。

真っ黒になって夜に溶け込んでいる。

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