第6話
――…
「は…っ。どうしよう…」
とにかくお祭り会場から少し離れた土手まで来て止まる。
ここからどうするのと考えてすぐ、さっきいた男子の大きな笑い声が聞こえてきて、思わず私は木の陰にしゃがみ込んだ。
「『長谷川サン』、こっち?」
「お前らなあ。もう戻ってよくね?俺わたあめ食べたいんだけど」
「なんでお前そんな無関心なんだよ。あ?わたあめなんか自分の家で作れ」
「俺ん家わたあめ作る機械ない。っていうか別に長谷川さん気にならないし。それに気弱な人だから多分怖がるよ」
「!」
あ、当たってる…!
クラスの誰だかは分からないけど、核心ついてる。
どうして分かったんだろう。すごいな。
…滲み出てるんだったら悲しいね…。
「顔は?かわい?」
「お前またか」
知らない友だちにツッコまれて、可笑しそうに笑う男子。
うわ、もう…。
段々、男子たちの声が近づいてくる。
多分もう、ここで私が動いたら見付かる距離。
どうしよう、なんか、怖―…。
笑い声は私の心を過ぎって耳を塞がせた。
「顔?顔は――「可愛いよ」
「…?」
「?え、誰」
「――そっちこそだれ?」
違う声が、耳を塞いだ筈の緩くなった指の隙間から脳裏に響いた。
この人…だれ!私のこと、知ってる人?
「あ、『長谷川サン』そこにいるし」
「……あ…」
男子の中にいた大人しそうな一人が、思わず振り返ってしまった私が身を隠していた木下を指差して言った。
その人は、元々持っていた懐中電灯を付けてこっちを照らす。
そうしたら私の目に、その声の持ち主――誰かが、逆光の中前に立つのが見えて。
「――…」
誰?
分からないのに、
どうしてか…。
……懐かしい…?
「あー…」
男の子は、溜め息をつく。
「誰って言われてもなあ」
そう言って、後ろ髪に触れる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます