第4話
可愛くも、ない。
そんな、言ったら人を苛々させてしまうような私のところに、少年はいつも笑って駆けて来た。
…そうつまりは、は つ こ いのひと。
弘くんがいなくなって、随分泣いたけれど、目の前にいない弘くんは少しずつ私の“思い出”になってしまった。
でも、こうしてアルバムを広げる度に思い出される、愛しさと暖かさ。
それから、いつまでも。
…弘くんの眩しさ。
キラキラ、キラキラ光って止まない。
私に、ヒーローってそういうものだと思わせる。
――…
『めいこちゃん、じゃーね!』
確か、弘くんの最後の言葉はこんな感じで、陽に当たって光る茶色い瞳からは、大粒の涙が流れていたはず。
私にとっては初恋のひと。
弘くんにとっては…親友って感じだったんだろうか。
わわ、なんか図々しいなあ、私。
「…ふー…」
私は少し幸せな溜め息をつくと、コロンとカーペットの上に寝転んで、目を閉じた。
――…
―…
…
「めいー。お祭り始まるんじゃないの」
「ん…?おまつ…り?ああっ」
私は、いつの間にかカーペットの上で眠ってしまっていたようで、お兄ちゃんの声で飛び起きて窓を見ると、外はもう夕闇に包まれていた。そして微かに側からお祭りの太鼓の音が聞こえてきている。
「母さんはもう仕事行ったけど、なんかニヤニヤしながらコレ置いてった」
そう言ってお兄ちゃんがぽす、と床に置いたのは、新品の浴衣セット。セロハンテープで袋に貼ってある紙には『この浴衣は一人でも着れるから着て行ってね』とハートマークが書かれている。
「ええ!やだ――ってアレ?お兄ちゃんバイトは?」
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