第13話 席は大事
「じゃあ、二時限目を始めます」
そんな陽宮先生の言葉から始まった二時限目。歌乃は必死に意識を保ち、奏は真剣に話を聞いていた。
「一応、さっきまでの感じだと班は大体決まりかけていると思いますので、まずは合宿の予定から話しますね」
陽宮先生は二泊三日とデカデカと黒板に書いた後、さらに細かく予定を書き込んだ。
「簡単に伝えていきますね。
来週の月曜日、一日目。早朝に出発。昼頃に旅館に到着予定。午後からレクを行います。終わったら自由時間です。
来週の火曜日、二日目。午前中はレクを行います。そして、なんと!午後は完全に自由時間です。プチ修学旅行的な感じだと思っててください。
来週の水曜日、三日目。三日目も午前中にレクを行います。終わった時間にもよりますが、昼食はおそらく食べてから帰る形になります」
では、続いて、と。黒板に張り出された紙。
左右二列ずつ、中央で分かれている、空白の四角が並んでいた。
「行きと帰り、両方でバスと新幹線を使います。新幹線の方は班で纏って座ってもらうつもりなので、バスの座席表を決めましょうか。基本的に隣同士になるように二人組を作って、決まった人から紙に名前を書き込んでいってください」
言い終わるや否や。教室にいた生徒のうちの半数が一斉に立ち上がった。
歌乃と和人は座ったまま。奏と弥生はすぐに立ち上がって黒板に近づいて行った。男子女子どちらも同じくらいの人数が黒板前に集まる中。
歌乃は後ろを向いて和人へと声をかけた。
「なあ、和人」
「すまん、無理だ」
「まだ何も言ってねえ」
「じゃあなんて言おうとしたんだよ」
「バスの席隣にしないか?」
「いや、多分弥生が自分の隣にしてるから……」
「お前の彼女押しが強いな?」
「まあ俺が告白された側だし」
「……それ初めて聞いたんだけど。んなら、その予想が外れてたら隣に」
「それは駄目です」
歌乃は前を見た。
そこには腰に手を当てて堂々と立っている奏がいた。
「何でだよ」
「私の隣に歌乃の名前書いたから」
「本っ当に何してくれてんの?」
「ちなみに和人は私の隣だよ」
ひょこ、と奏の後ろから顔を出した弥生は笑顔でそう言った。
その言葉に続くように和人も歌乃の肩に手を乗せて言った。
「な?言った通りになっただろ?」
「…………今すぐ消してくれ。書き直す」
「じゃあ何処を選ぶつもり?」
「人数的に多分一人の席が出来るだろ?そこを選」
「駄目。私の隣、決定ね」
「……お前の友達は?俺が奏の隣で納得してるのか?」
「もちろん。根回しって大事だね」
歌乃が周りを見ると数人の女子が歌乃の事を見ていた。笑っているが嘲っているわけではなく、ただ純粋に面白そうにこちらを見ていた。
「……俺の事どうやって説明したわけ?」
「クソ真面目なくせにたまに抜けてる見てて笑える奴」
「罵倒か?喧嘩売ってんのか?」
「褒めてるよ?」
「……なら良いか」
「「いや何も良くないよね!?」」
その後、席の強制変更なども特に無く。あっさりとバスの座席表は埋まり切った。
「意外と早かったですね〜……うん、まあいいか。それじゃあ、本日の授業はここで終わります。今週はあと二日、来週の合宿の準備、くれぐれも忘れないように注意してくださいね」
そんな陽宮先生の言葉と共に、二日目の授業は終わった。
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