第4話

「宇随さん」


勢い余って椅子ごとたいあたりしてきた、舐め腐った後輩を睨む。俺だったらこいつの査定ドン底にするな。


「今お時間宜しいでしょうか」



うわ、急に礼儀正しくなった。きも。心の中読まれたか?



「宇随さんの初体験っていつです?」


「は?」



一応業務的にはメールチェックから始まる朝。だが、朝の一服を終えた流れで働き始めたら忘れていたことを思い出し、午後になって電源オフのまま開きっぱなしのパソコンに電源を入れたところだった。


午後一からアホな質問をしてくる後輩—五十子いらこは特別珍しくもない。適当に返す。



「今佐伯班の皆さんの、聞いて回ってて」


「回るな」


「で、いつです?」


「それ真面目に返す奴いんの」



呆れて頬杖をついたまま、やっと五十子の方へ顔を向ける。(俺的)この佐伯班の中でそういった類の話は如何にもしなそうな顔面ランキング一位二位を争う奴が「いますよ」と真面目な顔をして答えた。



「まだ天野さんと真央先輩にしか聞けてませんけどお二人ともすんなりでしたよ」



あいつら…



「宇随さんは恥ずかしいんですか」


「煽んな。覚えてねーよ」


再び前を向く。ログイン画面で待機していたそれにパスワードを打ち込むと同時に隣から「ウワァァァそれモテてる人かモテてない人がよく言うやつだけど恐らく前者だァァァ」と一息に聞こえてきて目を細める。


「それ俺褒められてんの」


「どちらかというと嫌味です」


「あそ」


メールのアイコンをクリック。


「普通に16とかだったような—…」



呟きながら目に入ってきた、見慣れないメール送信者に眉を顰める間五十子は何やら声を上げていたが耳には入って来なかった。

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