第26話

「前坂ちゃん」


四人の中で最も小柄な桐が最後尾の天野をよいしょよいしょと押し運ぶ中で、それを止めた天野。


「帰っていーよ」



「え」


「心未ちゃんが大丈夫・・・ならもう二人にして大丈夫」


同居人が恐らく天野に触るなと桐の細腕を取る前で、笑みを浮かべる天野の口にした“私が大丈夫なら”の大丈夫、が、

二人きりでも怖くないなら=自分から頼っておきながら二人にも居てほしいなんて甘えてんじゃねーよ、に受け取れて。気付いたら口が動いていた。



「大丈夫。これ・・なら余裕そうだわ」



「ここ「あ、そ。じゃー行くか」


呼び掛けた桐の腕を掴んだままの同居人はそのまま抱え上げた。


「えっ、ちょ、待って知愛く」


「待たない」


「心未!? ふぁいとー!」


こんな暴君にやっぱり慣れているのか運ばれていく親友に、拳を突き合わせた。




「仲良しだね」


閉まると同時に自動的に鍵が掛かるドアを見て強張る私に、天野は何の気もない声を掛けた。


それを無視すると「あー…かなり拗らせちゃった感じ? かわいいね」と心底腹の立つ声掛けが続く。



「何でこれ、協力してくれる気になったの」



未だ緩まない拳。

背を屈めて覗き込んでくるような相手を睨み上げる。


「心未ちゃんは前坂ちゃんみたく純粋にありがとうとはならないんだ」


「ならない。まず信じてない、男自体」


「成程。


で。


あっちリビングでお話しする?


それとも


あっち寝室で手っ取り早く知る? ——“男”」

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オネエ・ウォーズ 鳴神ハルコ @nalgamihalco

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