第82話
「あー…落ち着く。蜆だけが俺の味方だわ…」
「ヒュ、ヒュ〜♪」
「何で急に吹けない口笛吹き出した? ナズナ」
「インスタントだってことを隠して恰も手作りを装ったからだよな。頭痛薬持ってきて」
口笛を吹き出したナズナ。
入口に凭れ掛かり問うた芹。
ズズ…と蜆の味噌汁を啜りながら呟くと肩を飛び上がらせて吹けてない口笛が止んだ。
「そういうことか。若を騙すのはいけねぇな」
「だ、だまっ!? そんなつもりじゃ…だって…蜆なかったし…」
「で?」
「ヒィ」と声を上げたナズナが「ごめんなさい…」と項垂れ、薬箱から頭痛薬を引っ張り出しているが今のはナズナに言ったわけではなかった。
この目の前の、ぶすっとした表情で頬杖をつく暴君に向かって言ったのだ。
「何だよ」
「『何だよ』 じゃないでしょ〜〜がこの暴君!!」
蜆ちゃんのお陰でかなり回復したのか声を張り上げることができた。
「流石若…!『何だよ』 似ている…!! はいっ薬です」
「ナズナそういうの要らない」
「あい」
「いや薬は要るよ?」
予想通り手の平に乗せた薬まで引っ込めてくれるおばかさんから、水の入ったコップと共に受け取り胃に流し込む。
「で、よ。花山院クン。どっっっれだけ不器用なの?」
野獣でももう少し好意の伝え方上手よ?
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