第81話

「神崎クン?俺の・・が世話になったようだな?」




「…一ヶ月くらい帰ってないそうじゃん、花山院クン」



足元を覗くと、前髪を掻き上げ立ち上がった男前が近付いてきて蓑虫になっている俺の上に跨って座った。


「ぐぇ」


マジで…勘弁しろよ…。



「何でお互い苗字で呼び合ってんですか? 久々の再会だから照れてる? 思春期?」


「思春期だと思うか? せり



「花山院クンが苗字で呼んできたから」



芹の方に振り返る男に付け加えながら、アンタは永遠思春期みたいなもんだろ…と心の中で呟く。




「若ー。蜆の味噌汁ねぇ、できま——って、ええ!? キャァ!」




わあ〜〜〜〜頭いた〜〜い!



「な、え、ちょ、うちの若は女じゃねぇぞ!? そ そりゃあそこらの女に比べたら断然べっぴんさんだけどなぁ!!」


「ナズナ。味噌汁作るの早くないか?」


エプロン姿のまま持ったお玉をワナワナと震わすナズナ。に、またど〜でもいいことを突っ込む美鮫。


つうかお玉持ってくんじゃねぇよ…置いてこいよ埃付くだろうが…。



「おー、ナズナ」



「へ!? な何で俺の名前…!? まさか俺、気付かない内にそこまで有名に…!?」



それに関してはその場に居合わせたナズナ以外の四人全員が突然の沈黙を始めた。




「酒くせぇな」


「そこまで察したなら退いて…」



「いや、聞きてーことあんだわ」



「わかった。わかったから…」



昔からとっても品のある御顔立ちをした口の悪い彼は、絶賛恋愛拗らせ中の花山院クンだ。

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