第74話

「入れ」



何とか息が整ってきた私に浴びせられる言葉は酷く冷たく、それでいて触れれば火傷しそうな程に熱を持っていた。



「ぃ、やです」



「あ? 可否は聞いてねぇよ」



そう言うとあろうことか私を担ぎ、乱暴に脚でドアを開けて中に入った。



「降ろして…っ」



全力で抵抗しようと身体を動かしても何の抵抗にもならない。何も言わない花山院さんは、寝室に入った。



「嫌…! 花山院さん!!」



お願い、と声を荒げるも虚しく、ベッドに放り投げれられてしまう。



「嫌嫌嫌嫌五月蝿ぇな」


「……の」



「は?」



「ベッド…は、もう…嫌、なの……」




花山院さんに背を向けて、

震える身体を押さえ込むように丸めて呟く。ずっとこうだ。



私の意見は尊重されるどころか聞いてももらえない。



だから



今日の靴の件が嬉しかったんだ。





「わかった。…だから泣くな」





え……?

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