第73話

当然ビクゥッと盛大に肩を跳ねさせた私は引き返すことも(背を向ける方が恐くて)出来ず、精一杯の後退りを開始。



しかし、方向が間違った。



来た方向ではなく花山院さんに正対して後退りした為に早い内に行き止まる。


だが有難いことにそれどころではない。



背は壁。



万が一胸ぐらを掴まれ外に投げ出されでもしたらおわりだ。




…待てよ。



その前に私、何か悪「ン——…ッ!?」



急激に距離を詰めた花山院さんは、私の首に手を添えてそのまま口付け。



そうして、無理矢理舌を挿れてきた。





「……!! ヤ、ぁ……っちょ…、…んん」




乱暴に、咥内を侵される。



どれだけ身体を押してもびくともしない。


顔を背けようとしても赦されない。



嫌だと息絶え絶えに声を荒げても覆い被さった柔らかい唇がそれを留める。




「待っ、て、い、きが」




ドンッドンッと彼の身体を震える手で力の限り叩いた。




それでも、許してはもらえない。




——気を失いそうになった時、やっと唇は解放されて、





「どこほっつき歩いてた」



思い切り咽せ込む私の目の前で容赦なく、やっと台詞は吐き捨てられた。




「で? 首のコレ、何で見えてる?」

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