第67話
善くんが身を引く私を無視して指の腹でなぞったのは、私の身体の、まだ消えない痕だった。
「あ…これ、は」
そうだ。
さっき、急いで来たから暑くて一番上のボタンを外してしまったのだった。
いつもなら我慢していたのに、こういう時に限って
…善くんの顔が怖い。
「チッ」
え??
今、舌打ちした??
「…で?」
「え」
「えじゃないわよ。気になっていることでしょ」
「あ、ああ、気になっていること—…。そう、ずっとね、」
何だったのだろう。
気になりつつも善くんが怖くて問い掛けを先に答える。
「ある日突然?気が付いたら私の部屋に堂々とベッドが鎮座しててね、それが気になってて…。引っ越しの時に煎餅布団捨てて、それから例の恐怖体験して家具買うどころじゃなくなったから勿論買った覚えなくて、何なら布団派だし99.9%妖怪さんだろうけど、何か怖くて聞けないまま寝てて、でもいつの間に?って気になって気になって」
「そこじゃないでしょ!!?」
何かの沸点が到達したか善くんの迫力が3D映画並みでびっくりした。
いつも3Dだけどさ。
「布団なんてくっっそど〜〜でもいいのよ!!
そんなんクイーンサイズでも何でも買わせておきなさい」
「くっっそ」
して何でクイーンサイズだと判ったのだろう…。
善くんの勘凄いな…?私ももしかしてこれが話に聞いたことしかないクイーンサイズ…?と、ホテルの参考画像と見比べながら花山院さんが不在の隙に考えたものだ。
目の前の美人さんは何かを堪える為ミルクセーキに手を出している。
ミルクセーキは物凄い勢いで減っている。
「店員さん、いいかしら。この、牛皮を被った狼さんのごまアイス白玉パフェ生クリーム増し増しアイス増量、」
と思ったら店員さんを捕まえて何やら早口言葉のようなパフェ?を注文している。めちゃくちゃ増されているのは判る。
「と、コーヒーおかわり。お願い」
優しい。
「食べたかった?」
「いや善くんも心未も全然太らないから羨ましい、私今からパフェ食べたらもう太っちゃうもん」
「いいじゃない、どーせ全部胸に行くんでしょ。ちょっとはあの子にも分けてやってよ」
「善くん?」
「はぁ、どうして一緒に育てた筈なのにこうも違うのかしらねぇ」
「善くん?」
彼はベ、と舌を出した。
「……」
私はそんなお茶目な善くんを眸に映した後 溜め息を吐いた。
「どうして、私なのかなぁ」
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