第65話
弊社の最寄り駅を指定してくれた善くん。定時ダッシュして待ち合わせ場所に到着。
辺りを見渡してスマホを見ると、10分程前に近くのカフェに入っているとの連絡があった。
気付かなかった、暑くて首元のボタンを外しながらそちらへ向かう。
「キリティ〜」
間接照明がお洒落なカフェ。挙動不審に立ち入ると、綺麗な金髪はすぐ目についた。
大きめに手を振ってくれる善くんに安堵して席に着く。
「善くん有難う…お洒落なカフェだね」
唇を尖らせつつひそひそ言うと、顔を近づけてきた善くんは周囲を一瞥して「そ?」とにっこり笑んだ。
「今日は大喰らい居ないしゆーっくりキリティーの話聞こうと思って」
善くんの言う大喰らいとは心未のことだ。
「何飲む? 割とご飯系も美味しそうだったわ」
さっとメニューを見せてくれ、注文を待っていてくれたのか問うと、「だって一人で、寂しいじゃない」と善くんらしい優しい言葉が返ってきた。
「落ち着く…。あ、私、今日はお酒飲もうかな」
「落ち着く?」
きょとんとした目と合って、今私が言ったのかと無意識だった呟きに気付いて苦笑い。
「えと…」
泳ぐ視線の先には可愛い、今時の、お洒落な格好をした女の子たちが善くんを振り返って見ている様子が映った。
「なぁに、目なんて泳がせて。アタシを見なさい」
「ひっ」
顎を掴まれて思わず反応する。周りの人が見てる…‼︎ 善くん…‼︎
ちが、違いますこれはっと意味を成さない謎の弁解を心の中で繰り返す。
「ぜ善くんもすっごくあの、綺麗なお顔なのに落ち着くなぁって思ったの」
「アタシ“も”?」
ピク、と動く眉。
一瞬の間の後、「…成程ね」と何とも絶妙な、そわそわする頷きが返ってくる。
「まだ何も言ってないのに」
「お酒はやめておきなさい。まだ木曜日だしね」
「善くん」
「大体ね。でも、キリティーの口から聞きたいわ♡」
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