第62話

すぐに言葉が出て来なかった。



今までそんな真っ向勝負かけられたことなかったからだ、


だっていつも勝手に上がって勝手に…



じゃ、なくて。



「何で…」



そんなこと聞くんですか。



どういう、意味…ですか。



そうだ。



私はその意味を考えて、呼吸が止まったんだ。



常に私に恐怖を与え続けるこの妖怪が、今。


今までとは違う怖さを、熱っぽい眸で伝えてきたから。




「抱きたい」




「へ」



「今すぐ。我慢、できねーわ」




花山院さんは、私の腰に手を回して自分の方へ引き寄せた。




周りの背景の色が見えなくなって、連れ去られるかと、思った。

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