第54話

「勝手に入らないで。許可していません」


「おまえの許可は必要ない。俺が許可した」



「…もしかして、二課の方ですか?」


ジロ、と爪の先から頭の先まで怪訝な視線が動く。私は怖かった。私の後頭部を掴み、持って入った男が次に何を仕出かしてしまうのか。


「は、い前坂と申します。こちらが」


目が慣れてきて、相手の容姿を捉えた。


ド凡人のド率直な意見を申させていただくと、とっても美。それでいて可愛い同世代くらいの女の子が立っていた。

もっと語彙力鍛えよう。私 辞書読もう。



この子が百目鬼さんが担当している——



美しいと可愛いの割合6:4な感じだ。


勝手だが秘書課のお姉様〜感を感じる。これが高貴?


サラサラのあまぁい、お砂糖多めなミルクティーベージュはハーフアップで留められている。もう私の胸はキュンキュンだ。


百目鬼さんとはどういう関係なのだろう。



「…百目鬼にしか頼んでいませんが」



ちら、と花山院さんを見上げると、控え目そうな口が開いた途端「来ねーよ」と。


悲鳴を上げたくなる台詞を吐き出してくれた。



「!?」と肩を上げた私、小さく眉を動かした西村嬢。



アナタ天野さんには敬語だったし外面だったジャン!?

どうした!?


私達子ども五十子くんをなめているのか!?




「…………」



花山院さんに目を遣っていた西村嬢は沈黙を作った後一言、




「パス」






私を見て言った。

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