第53話
「何で解っ」
「見たら解る」
ぽつりと溢した言葉に、悪戯な笑みと種明かし。
間が在って、
「まー、それに、電球取り換えるだけにしては揃いも揃って面が良い…あの窓口坊やも短期雇われか何かかと思ったわ」
と、思い出すように真っ直ぐ前を見据えた。
「窓口坊や?」
気になる単語に引っ張られる。
「おまえがぎっちゃんって呼ぶ同期の桜木真央クンな」
「どうしてそれを」
「てめーら二課は通常、各々の“担当案件”は他人じゃ代えが効かない。ほぼ依頼人からの指名みたいなもんだもんなァ?」
するりと躱された問いかけに、ぎっちゃんに手出したらただじゃおかないぞと睨みを利かせ私たちは目的地に到着した。
「ここです。西村のの香さんの在籍している秘書課—といいますか、副社長室ですね」
花山院さんはスラックスのポケットに両手を入れたまま、
やっぱり何も言わない。
深呼吸して、ノックした。
少し待ってみるも返事はない。
「? いないのかな」
「いや居る」
何と暴君は革靴の裏で重厚な扉を蹴り開けた。
「!!?」
声にならず目玉飛び出さんばかりに気張ると目の前の開けた逆光の中に人影が動いた。
「何の音!?」
そうなるよ!!
「申し訳ございませンン!!」
「躓いた」
頭沸いとんか!?「ぐぇっ」
心の中で叫んだ筈だったが一瞬の間に後頭部を鷲掴みにされて酷く怯えた。
いつから地獄耳って心の声も拾えるようになった?
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