第51話
「—で、は百目鬼さんが担当されている方の所に向かいつつ此処・二課についての説明もします、」
ね…?と語尾を小さくしながら掻き集めた資料を持って席を立つ。
後輩の妖怪は返事をせず、じっと私を見返していた。
「あの、約束(?)の時間、遅れて す」
怒っているのかと内心ドギマギしていると、廊下に出た途端引かれた腕が持ち上げられるようにして捕えられた。
驚きに見上げると、そのまま唇を重ねられる。
「ん……!?」
ここは人通りも少なくない共用の廊下。
両手が塞がっていて、されるがままの私に花山院さんは言葉なく柔らかい唇を重ねた後すぐに解放した。
「ちょ…きゅ、うに何ですか!? ここ会社」
「家ならいつしても?」
「ノー!」
見たくないものを見てしまった人は居ないかと辺りを見渡して場所を主張すると、唇とは裏腹に、冷たい視線に見下ろされながら問われて答えを張り上げた。
「おまえ腹減ったらどうすんの」
何故この男はイラついた表情をしているのか。
「何、ですかいきなり…? ご飯食べます」
「だろ? 当然だと思うがその時飯に拒否権とかねぇよな? 飯に今はだめです食べないでくださいって拒否られた事、ある?」
「…ないです…」
「な」
な! とは!?
ご飯ってこと!?
花山院さんの影の中で決死の反論を展開したが何分この男は聞く耳を持たない。
一方的にちゅうされて、一方的にあなたはご飯だよと言われただけだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます