第50話
そうしてしっかり目を光らせた後何処かへ行かれ、ふと思った。
席とは…!? 何処!?
慌てて振り返るもそこに姿はなく、自席に戻って作業をしていた五十子くんを見つけ聞くも心ここに在らず。黙って首を横に振られてしまう。
「前坂さん」
「はい」
「『おかん男子』って知ってます?」
難しい顔をして頬杖をつく五十子くんのPCを覗くと、何を見ているのかと思いきや某レシピサイトのランキングが並んでいた。
「全然意味わからんくて」
つい、と見上げてきた五十子くんに「仕事?」と聞きながら首を捻った。
「あ、それなら——…」
「おい」
「アッ」
すっかり話し込んでいた。ら、背後からただならぬドス黒いオーラが肌を突き刺し、貫通。思い出した。
「…う」
痛む胸元を押さえ、聴こえてきた声に振り返ると、腕時計を見下ろしたイケメンがぶつぶつと何かを呟いていた。
「6分31秒。1分31秒の遅刻。32、33、34、」
「アアア大変失礼致しましたアアア」
膝から崩れ落ちるように首を垂れると、「いや、全然?」と返ってきて目玉が飛び出しそうなくらい驚いた。
今の流れ、私、処刑されるのではなかった…?
五十子くんはそのような私の姿に驚き引いていたが。
「俺は先輩がミスをすればする程後で…ね。いっぱい、ミスしてほしいなぁ」
「……ヒッ」
変な声出た。
「当然だろ、罪と罰」
「それってもしかして、パワハラ」
「俺が?先輩に?嫌だなぁ、身体に憶えさせるだけなのに」
ね、と薄紫に濡れる瞳のまま首を傾げられ、ただただ後ろで頬を染めた後輩が、先輩が新しく入ってきた男の犬に成り下がる様の目撃者となっていた。
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