第48話

「百目鬼さんお疲れ様です」



ヒェッ


助けが入ったかと思いきや、背後から別の宿敵が現れただけだった。


「おやァァ前坂センパァァィも。お元気ですかァァ」



こっっわ!!


え、元ヤンに絡まれた!?



艶やかな黒髪が一瞬ド派手な金髪に見えた。



去年の健康診断時確か身長154cmだった私を推定180cm強—30cm上回る男が挟んで立つ。その威圧感たるや。


間に挟まれて?というかリアルに挟まってきたなこれ。

やばいやばい。


「ちょ」


慌てて前方・百目鬼さんの鳩尾を押そうと構えるも何故かその手を背後の花山院さんに取られた。


「わ」


目の前の両手が背後から伸びてきた片手に握られる様子を見つめていると百目鬼さんが声を上げる。



「先生といえば前坂おまえ、午前中先生に色々説明してやってくれ」



「は、い」



思わず返事してしまった。ほぼほぼ強制だ。

前後から挟まれる恐怖から逃れようとしたのと、何故か握り締められている手を見つめてぼんやりしたのと。



「で、その流れで俺に代わって西村さんの所行ってきて」



「…へ」


「前坂先輩」



気の抜けた声を零す私を後ろから覗き込んだ花山院さん。



遮られ、百目鬼さんは「俺別件あるから頼むわ」と言い残して去ってしまった。

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