第47話

「前坂ァーー」




「はい」



数歩先にいるというのにわざわざがめつく名前を呼んでくる、信頼も何もない上司が此処に。



▶︎たたかう

 にげる

 ぼうぎょ

 じゅもん

 どうぐ



「とんでもなく失礼な部下だな」


「口に出てました?」


「いや顔に出てた。やっぱりな」



百目鬼さんは持っていたファイルをぽんと頭の上に乗っけてきた。


「おまえ午後空いてるよな?」



▶︎空いてないと言いたい



「顔に出すな? な?」



頭の上のファイルがどんどん重くなってくる。


「ぐぇぇ百目鬼さんみたく首が短くなって奥さんに愛想尽かされて出て行かれて独りぼっちになっちゃうぅぅ」


「まじで。おい。なぁ」



顳顬をひくつかせた男に事実首を短くされていくのを感じていると、ふっとそれが和らいだ。



因みに私の、可愛い部下より己のお目当てのUSBを優先した一件についての心情は全く和らいではない。

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