第36話

五十子くんが若干誇らしげに掲げながら持って来た用紙は、私が手にする一歩手前のところで取り上げられた。



誰に?




百目鬼さんではない。

あれは視界の奥で朝から大きな大きな欠伸をかましている。どんな上司だよ。



では改めて問おう。一体誰に?





「餓鬼。今日から宜しくな?」




五十子くんの肩に腕を掛け至近距離でにやりと口元を緩めるそれ。それ、


それ…!


その顔、今朝私もやられた。身に覚えがあった。デジャヴだ。


だから五十子くんは今朝の私がそうであったように目が点になっているし、私はそれを知っていたから蒼くなって動きを止めた。


まさか。



まさか。



そっと手にしたままの編成表にもう一度目をやる。そこには紛れもなく在った。




「もしかして、『俺様』……」




「俺以外誰がいんの?」




それは、ふ、と悪戯な笑みを魅せる人物ようかいだった。

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