第35話

…何だか嬉しそうだった気がするのは気の所為…?






一日振りの出社は、社内の様子がいつもとは違った。




「前坂さんおはようございます。昨日休んだって聞きました。初めてですか?」


「おはよう、うん?」


オフィスにて自席へと向かう途中、初めてかなんて変わったことを聞きながら合流してきた五十子くん。


彼に返事している間にもその背景は慌ただしい。


五十子くん、と呼び掛け彼が返事をした時私はデスクの上に一枚の配布物を見つけて拾い上げた。



「何だこれ」



「ああそれ」



そうですよね前坂さん昨日居なかったから、と口にする彼の横で文面を読み上げる視線は止まらない。



「佐伯さん、百目鬼どうめきさん、天野さん、ぎっちゃん、私…」


「僕も居ます」



「ん、これ、二課の名簿?」



見た感じ、此処・二課のただの名簿のよう。


それがどうして私の席に。



「あれ?



この、五十子くんの下に書いてある名前? 手書きで消されて『俺様』って書いてあるけど」



「え? どれですか……本当だ」



一つ名前がご丁寧に、油性ペンで見えないよう塗り潰されていて読めない。


読めない上に『俺様』。



「こんなことする人居たっけ」



可笑しくてぷぷぷとテンプレートに笑いを堪える。その隣で五十子くんは首を傾げた後何処かへ行って戻って来た。



「前坂さん、僕が貰った用紙があります。これには何も悪戯されてな」


「へ」

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