第19話

ウチはそれに首を傾げることしかできなかった。



つうかそもそも何で怒ってたんだっけ?


益々頭がこんがらがってくる。



「で、こそでちゃん、文句言いたかったんだっけ。どうぞ」




「ん…。や、もういいわ。アンタの衝撃の事実で吹っ飛んだわ」



ウチは力の抜けた腕を、イクヤの服から離した。


「イクヤ、前髪切れば?キレーな顔してんだからさ」



勿体ねぇじゃん、と呟く。イクヤが何も言わないので痺れを切らして見上げると、きょとんとした顔をしていた。



何、その顔。



長い前髪から少しだけ覗く眸が、興味深げにこっちを映している。



「ア!!」



「え、何、びっくりした」



「イクヤお前、大事なアニメは!?終わったのかよ!?」



再び掴みかかる勢いのウチに、一瞬息を止めたように見えたイクヤがふと笑い出した。



「何笑って…!」



「ごめん。だってこそでちゃん、それで怒ってたんじゃないの」



「な!?…あ、まぁ…そうか。じゃなくて!!いいんだよ早く行け!!」



行け!と二階を指差す。イクヤは何か変な目でウチを見下ろした。




「いいよ、もう終わる時間だろうから」

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