第14話

何でここで啓くんが出て来るのか。



そもそもアンタ程度じゃ啓くんのサインなんぞ貰えるわけねぇだろうが。



啓くんは超ウルトラスーパーアイドルからの超売れっ子俳優だぞ?現役だぞ?


なめんなよ素人が。




「こそでちゃんの機嫌が直るっつうなら貰ってくる」



「いや、まずアンタが貰えるわけねぇだろ…」




ウチは呆然として隙間から覗くままのイクヤを見つめた。イクヤは小さく指先で頬を掻いた。




「…………貰える、んだ」





「あ?」



何言ってんの?


てか声小さすぎてよく聞こえねぇよ。



「…嘘吐くな腹立つ」




背中の向こうでは、霧雨が小さな粒となって小雨に変わっていた。まだ少し肌寒いくらいの季節だった。




「あー……」



イクヤは何かを言い辛そうに表情を歪ませる。




けど俯きかけたその時、いつものカッチカチな制服姿でないイクヤが――――何か、"別人"のように見えた。



気がした。








「こそでちゃん。俺、…アイドルなんだよね」

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