第12話

ウチはイクヤから見えないところでスカートの端を握りしめた。



「うっせぇ!別にテメーの為に来たんじゃねぇんだよ!文句言ってやろうと思ったから」




肩に力が入るのに。



足は浮きそうだ。





「それ。今じゃなきゃ駄目?」



「それ、って…」




会話に、沈黙ができる。



だめだ。


だめだ。



何か言わないと。




言わないとまた、ドア、閉められる……。





「え」




イクヤが零した声を耳にして、落とし掛けていた視線を上げた。



「な、何だよ」




「こそでちゃんもしかして、泣いてる?」

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