第24話

ただそれだけなのに、あたしの心臓は余裕のない彼の表情に飛び跳ねた。


こんなときだって、どんなときだって、心臓だけは素直に動く。




「…ここ」


「?」



そう言って、優しくあたしの肘をなぞる。


「っ」


少しだけ、鈍い痛みを感じた。



「気付かなかった?」


そう言って、ふ、と微笑む表情は憂いに満ちている。



「真実も怪我してたのに、真っ先に俺を心配した」




「そんなの…」


そんなの、当たり前じゃん。

あたしじゃなくたって、そうしてるよ…。



「当たり前じゃないよ」



高橋くんはあたしの気持ちを読みとって続ける。


「真実だからだよ」


「……」



――あたしだって。


あたしの、方が。



あのときぶつかったのは、絶対あたしのせいで。


眼鏡も壊したし、怪我もさせた。



なのに。

責めなかった。


文句一つ、言うこともなく。



だから――…。




今やっと、気付いた気がする。







強く掴まれていた腕。


背けていた顔。



ちゃんと、真正面から君を見て。






――…今からこの想いを口にする。

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