第19話

「あー…、ええと」


そう言って辺りを見渡す。



「大事な話?」


「う、ん。あ、じゃあ」



席を立って、嵐の腕を掴んだ。


それと同時に、周りの女子が悲鳴をあげる。



「…ごめんね?」



そう言ってから嵐の顔を見ると、嵐はあたしにウインクした。…あ、そういうこと?


あたしは嵐のを真似して、ウインクする。



途端に周りは絶叫した。



嵐さえも頬を染めた。



「…そ、ういうわけでやったんじゃ」


「え!違うの!?」









――屋上。


校内で最も太陽に近いその場所は、春の暖かい日差しをあびて、風に揺れているようにも見える。




「それで?」


真剣な顔で話を聞こうとしてくれている嵐に向かって、短い髪を耳に掛けたあたしは頷いた。


「うん、あのね―…」



あたしは嵐に、昨日のことを話した。



高橋くんと会って、初めて話して思った。

地味だと。


でもそれは違くて、本当の顔があった。


それを知って、今までに無いくらい緊張してしまった。

ドキドキした。



でも何故か分からなくて。

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