第4話
(ま、また桜木…?)
「また!?」
驚いて何故か怖い顔をする嵐たちに、あたしは「ごめん、ちょっと行ってくるね」と残し、着きかけた席を立ってたった今来た道を戻った。
「真実先輩、突然すみません。あの、お手伝いお願いしても…」
「あ、手助け?いいよ、なんでも言って」
そう言って、言い辛そうに見上げる一年生の頭を優しく撫でる。
「「……」」
――あれ?
今。
あたし達のやり取りを見ていた人が頬を染めたように見えた、のは、気のせい…か。
視線を目の前にいる一年生へと向けると、彼女も頬を真っ赤に染めて固まっていた。
もしかしてあたし、また何かやらかしたとか。
うわあ、恥ずかしい…。
「そ、それで何処?」
「あっ…、体育倉庫なんですが…」
「ん、運んでおけば良い?」
「すみません」
そう言って、申し訳なさそうに項垂れる一年生。
全然良いのに。
どうせ先生が『二年に桜木って奴がいるからそいつの顔でも見に行くついでに頼んで来い。おもろいから』とかなんとか言ったんだろうなあ、とは想像つくし。
「昼休みやっておくから、戻って平気だよ」
ニコニコ笑って見せると、一年生は表情をパッと明るくして、お礼を言って戻って行った。
「真実。利用されてない?大丈夫?」
廊下で一年生を見送っていたあたしの背後から顔を出した嵐が、眉間に皺を寄せて言った。
「だいじょーぶ」
「何で」
「あの子の顔見たら、そうは思えないよ」
「なら良いけどさ~」
嵐は唇を前に突き出して、拗ねてみせた。
いや、可愛いんだけど…。
きっと、あたしを心配して言ってくれてるんだってことは分かる。
でも、あたしにもこうやって手助けをしていて、身についたことがちゃんとあった。
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