第17話

「……」



しばらく眠ったあと何気なく目を覚ましたあたしは、今何時だろうと部屋の時計を探した。




「……」


あれ、今何か…。

あたしは窓の外に目をやる。




「……」


あれ?ハルの幻覚?




「……。ん!?」



壁掛け時計を捜して壁を伝っている最中、愕然としたあたしの目に映ったのは、部屋があるニ階まで届く隣のお家の木に登った――。



「え、ハル!?!?」



だった。




ハルはあたしの顔を心配そうに覗き込んだ。




「ちょ…ええ!?ハル何して…ええ!?」


あたしは頭の痛みさえも忘れて、ベッドに這い蹲って急いで窓を開けた。


すると冷たい風が部屋に入り込む。




「ハ、ル…!」


あたしは流石に木の枝に踏み込めないハルに向かって、手を伸ばした。

ハルはその伸ばされた手を優しく掴んで部屋に跳び入った。




「ハ「めぐ!」



あたしが言うより早く、ハルはあたしを抱きしめた。


いつもより、ずっとずっと優しく。



「めぐ、寝てていいから」


ハルはあたしを離すと布団に誘導した。

あたしは言われるがまま、足まで布団を被ってベッドに座らせられる。




「これ、何がいいのか分からなかったごめん」



そう言ってハルは持っていた袋を逆さまにした。




その袋から一気に出てきたのは沢山の……



沢山の…風邪薬だった。

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