第6話

"彼女"の名前を呟いて、少し段差のある隣のベッドに腕を伸ばす。ラシェルはそれに寄り添うようにして近付いた。


そうして頭を引き寄せ、額にキスをする。


「もう起きていい?」


一応、小さな姫君に許可を取ろうとすると、彼女はその濁り紅い眸に俺を映したままもう一度確認の口を開いた。



「昨日、何人撃ったか分かる?」


「…昨日?」




心臓が『そんな事実は知らない』と波打つ。




俺は「十」と答えた。



気まずげに視線を泳がせてラシェルを映し返せば、彼女はやはり真っ直ぐな眸をして視ていた。


その眸を見て、誤ったことなら分かる。


けれど、そもそも"そういうこと"があったことすら記憶には記されていなかった。

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