第5話
俺は溜め息をついた。
「だから、なんで泣いてんの」
跡を残す眠気に伏せた瞼で問うと、相手は口をへの字に曲げて「わからない」と答えた。
「悪夢でもみた?」
その問いにも「わからない」と首を横に振る。
手を伸ばして頭を撫でてやるのでさえ気怠い俺の身体には、何か理由があることをまだ知らない。
「私の名前は? リム、憶えてる?」
理由のある問い掛けに、そうだったと思う俺は、お互い横になって向き合ったままの相手に僅かに頷いて見せた。
「…憶えてるよ、……Rachelle」
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