第9話

低く



気高く



美しい声…





ドキン、と胸が鳴った。



彼は胡坐をかいた上に降りた私を抱えたまま、私がその腕に添えた左手に視線を向けた。


けれど全く動じずにその深紅の瞳を今度は私へ向け繰り返す。




「何か…?」





そう告げた口元を見た私は、ゾク、とする感覚が翼の先まで伝わるのを感じる。




あの綺麗な声を発す口には、牙が在った…。

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