第81話
「!?」
触れたことのない感触に背筋が凍る。
目の前には、完全には閉じず、美しい瞼を魅せる彼。
視線はあたしの唇に向いている。
下くちびるを、噛まれて…。
ちゅ、と不慣れな音が縁側に響くと同時に、鈍い痛みが噛まれたところに響き。
静かに唇を離したらいおんさんはあたしのそれを視線の先に置いたまま、指先をあたしのにふらりと伸ばした。
当然、意識を手放しそうになったまま動けない。
あたしに甘い痺れを与えた張本人は、色を帯びた視線で尚もあたしを苦しめながら、紅く染まった唇を開けた。
彼の下唇に、あたしの赤がついていた。
「悪い。…痛かったか?」
「い、ひたい……?」
ただでさえ、色々と追い付けていないのに。
待ってと言わずに堪えているのに。
どうしてそんな、あまくするの?
「沙織が、…俺のことを『きらい』ではないと分かったら、思わず。」
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