第80話

「その先は聞かなかったか?」





何だか楽しそうな表情に、今度はあたしが驚かされてしまう。




その先?





「沙織。俺は『人間はきらいになれない。だから、好きにならなくていいから。嫌いにならないでほしい』と、そう言ったはずだが?」





「え、」





思い返してみると、あたしが聞いた言葉は『人間はきらい』、そして『好きにならなくていいから、』のそこまで。





「……。」



「嘘じゃない。」





確かに頷くらいおんさん。




あたしの顔は、次第に蒼ざめていった。





「ご、ごめ、」





“ごめんなさい”と、そう言い掛ける。





言い掛ける、ということは最後まで言えなかったということで。











らいおんさんは突然、噛み付くようにしてあたしの唇を食んだのだ。




がぷり、と。

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