第79話

「どうしてそんなこと言うんですか…。どうしてそんな大事なこと、あたしの気持ちまで、勝手に…。」





らいおんさんの蒼は、発火したように昇る熱を鎮静するかのようだけれど、それは同時に哀しい蒼でもあった。




「らいおんさんが言ったんですよ。『人間はきらい』って。あたしが気を失う前、確かに聞こえてきたんです。」





淡々と瞳に彼の金色を映して、言葉は伝う。



らいおんさんは何故か驚いたような顔を見せた。



聞かれているとは思わなかったからだろうか。





「…聞こえていたのか。」





あたしは頷く。



「『きらい』って、言った。」






何か、その単語を口にする度、さみしかった。







すると彼はゆるりと表情を緩め、目を細めて「沙織はどこか少し、抜け目がある」と口にした。





「は?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る