第78話

「でも、沙織は俺のことが嫌いだろう。」





くす、と小さく笑みを浮かべながら、それでも繋いだ手を離さない。




「俺は、自分が傷付いた時に泣く奴を見た後でも、平気で人に傷を負わせ、それを笑って生きてきたから。」





遠回しに、お前とは違うんだと。



住んでいる世界が違うんだと。




繰り返しては心に在る傷を抉るような彼に、あたしは腹が立った。





『人間はきらい』



そう言ったの、らいおんさんじゃないですか。






「らいおんさんじゃないですか…。」





唇の端から落ちては消える言葉たち。





貴方を嫌いなのはあたしじゃない。




貴方自身。






貴方が、貴方を嫌う人より先に自分を嫌いだと口にしたかどうかはわからないけれど。

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