だから、だから、泪が止まらない。

心が痛い。

鋏を咥えていたらいおんさんはそれを地面に置き、脚に力の入らないあたしに気付いてか、頭を潜らせ背中に乗せ、縁側へ戻って行った。

まだ涙が止まらなかった。

彼が縁側にあたしを置き、自らの前足を掛けると塵のように毛皮は消え失せ、一瞬というのには速すぎる速度で姿を変えた。

ゆっくりと。

目を留めてしまうほど、万人が視線を奪われてしまうほど、綺麗に姿は変わる。

そのうち気が付くと、頬にはヒトの手が寄せられていた。

「…………誰が、沙織に傷付けられたと？」

らいおんさんは優しい笑みを浮かべて、あたしの泪を拭い去った。

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