第73話

「ごめんなさい、本当に、ごめんなさ……」





ガタガタと震える手には、人間はきらいだと呟いた彼の言葉が、“ない”と思われる未来を待つ彼の言葉が、纏わりついているような気がした。




血ではなく。



言葉が。





どんな気持ちで人間はきらいだと口にしたのか。




どんな気持ちで“ない”未来を目にし続けて生きているのか。





どちらも、あたしにはわからない気持ちだ。





永遠に、気持ちを解ることは出来ない。






血が、同じではないというから。








「貴方を、傷付けたくないのはあたしの方……。」






らいおんさんはいつも、いつも、あたしを傷付けないような睛で見るけれど。


本当に心の底から彼を傷付けたくないと思うようになっていたのはあたしの方だった。



あたしが、彼を傷付けまいとしていたのだ。



それが今、壊れてしまったような気がしたのだ。

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