第71話

沈黙を返す彼に、何か聞いてはいけないことを聞いてしまったときのような、嫌な汗が滲んだ。




考えてみればあたしがこのお家に来てから今まで、らいおんさんが庭へ出た姿を、一度も――…。





だめ、だ。





動揺からか揺れる視線の先に姿の在るらいおんさんが、自分の項に手をやる姿を映しながら口を結んだ。





「やっぱり大丈夫。自分で取りますね。」






結んだはずの唇は、震えた。






それに気付かず木の方へ向き直る。





五段程あった脚立の段をひとつ、降りたその時。







いつか聞いた、聞き覚えのある“唸り”を耳にして振り返り――――。









其処に在った姿に、悲鳴を上げた。

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