第69話

「沙織。それは俺には“ない”と思われる未来だから。」







――あたしの頭の中では、答えがもう、本当は見つかっているはずで。



なのに、なのに、逃げようとしているのがわかる。





「『うらやましい』と、呟いた。」





今はらいおんさんに、『その話を止めて』と口を開くこともできない。



あたしには、できなかった。




らいおんさんがそうやって、あたしを心配するような、優しい睛を向けるから余計に。





「そうしたら、」




彼はゆっくりと瞼を閉じる。





「もう逃げる必要もないのかと、思った。」













あたしが目を覚ましてその話を聞いた時。


前に瞼を閉じてから丸一日眠った後だったと気が付いたのは、そこからまた少し眠り、朝、目が覚めた時のことだった。

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