第65話

少し空いた距離の先。



風が貴方の金色を攫う。





「俺は、どちらかというと人間にはなりたくなかった。」




命の在り方を選択できたらの話だけどな、とらいおんさんは言う。……命の、在り方。





「どうして。」




拒絶されたような、味がした。


けどあたしはそれを自分のことだと受け入れず、どこか第三者の目で人間が拒まれたと感じた。




彼は大きな右手で、あたしの髪を風と共にすいた。





「人間は、感情があるだろう。感情があるから、人を殺めたり、陥れたりする。――意味なく。」





『意味なく』




そう口にしたらいおんさんの睛は、恐ろしかった。






「……だけど、感情がなかったら…。」





あたしは、自らのお腹の辺りをきゅっと抱きしめた。

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