第64話
「ジュウケツ、シュ?」
らいおんさんは、それに静かに頷いた。
すると柔らかく冷たい夜風が彼の浴衣の袖を揺らして、その髪に触れていった。
らいおんさん。遠くに行ってしまう気がして怖かった。
「或る年に、風の吹かなかった季節があったんだ。その年その季節、この世に沢山の獣血種が生まれた。」
夢のような話。
けれど話しているのは、紛れもない、目の前でこの手に触れさせることのできる現実世界の貴方。
それだけが、この話が嘘でないことの証明になれた。
「獣血種は、完全な人間じゃない。原因は今も解っていないが、別に父親か母親が動物とかそういうことではなく、子どもが“こうなる”。」
「完全な、…人間じゃないの?」
「うん。」
彼は笑みをつくって浮かべた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます