第63話
「沙織の“鼓動”は、よく聞こえる。」
心臓の音なんて聞かれて、どう応えたら正解だという。
しかもこのタイミングで。
「そ、それはどうも……?」
自分でも笑ってしまいそうなしどろもどろさを持って、対応する。らいおんさんはあたしの首元に頬を摺り寄せたまま、美しい睛だけであたしをドキリとさせる。
あたしがどきどきしているのは、貴方が理由なのに。
「沙織はきっと、長生きするだろうな。」
「、え。」
今の言葉は、身体にしっくり来なかった。
『沙織は』って。
「ど、どういう意味なの……?」
考えが追い付かないまま話を続けられてしまうのは、いつも、酷く淋しい感じがする。
彼は頬を離して、あたしを真正面から見つめた。
――――あたしが、さっき。
どうにかして息継ぎをしようと出て行ってしまった、深い深い水底。
らいおんさんは、そこに取り残されたような目をしている。
蒼の水面に映る月だけを泳がせて、“ああ、また行ってしまった”と。
「――――――……沙織は、“獣血種”を聞いたことがあるか。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます