第62話

どうして急かすのかわからない。


どうして貴方を人間以外のそれに例えてしまうのか、わからない。




「……。」




後で、この時のことを思い返した時のこと。想像してみても、ぼやけているとしか思えないような――まるで幻のような空間で。



あたしは深い 深い 水底から、抜け出して息継ぎをするように、一度、らいおんさんの睛から目を逸らした。




もしかして、と。




「ふ、」



言いかけて狡いあたしはらいおんさんの反応を待ったりするのだ。


けど、見つめた先の彼の白い首元は全然動かなかった。




「不老不死、とか……。」







言った後で、じんわりとした暑さが項に這ったのに気付く。




まだ、彼の首は頷きも、傾げもしなかった。





痺れを切らしておずおずと目線を上に上げる。



いつのまにか、彼の足と足のあいだに膝をついている。





目が合うと、らいおんさんは微笑んでいて、微笑んだまま目元に影をつくっていて、つくったまま、それで。



身勝手にあたしの首を引き、傍へ寄せた鎖骨に、頬を寄せて寄り掛かった。

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