第59話

「沙織。」




らいおんさんは言葉を続けて、あたしの名前を呼ぶ。


聞き分けのできない子どもに言い聞かせるよう。







「怖かったら、怖いと言っていい。離れたかったら、離れていっていい。誰もさおりを責めたりしないから。」









――――こんなに優しい声をしているのに。




どうして、こんなに哀しい睛をするのかな。





らいおんさんの声を聞きながら、睛を見つめながら、あたしは考えていた。







「らいおんさん。」





もうあたしは、貴方を独りにしようとは思えなくなっているのにそんなこと、言わないで。









「なにか、……“秘密”があるんだね。」

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