第57話

触れている間、無防備なその彼。


たくさんのその睫毛にさえ触ってみたくなってしまって、うずうずする。




だめ、だめ。




そう言い聞かせた矢先。





ぱちりと、閉じていた瞼を持ち上げたらいおんさんの睛と至近距離で視線を交わすことになる。



「うひゃ、」




喉の奥の奥の方から小さな悲鳴を響かせて、後退りしようとしたあたしをじっと見つめる丸い睛。




月に、濡れている。





「ふ。」






――あ。




笑った。






「さおり。俺は鼻が普通の人間より幾分かいいから、すぐにバレる。さおりが、何をしようとしているのか。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る