第56話

らいおんさん、髪が濡れたままです。




そう言う前に傍へ寄った彼は拭けとだけ言い、隣に乱暴に、胡坐を掻いた。




鼻に通る石鹸の香りが、同じだ。





あたしはふと、何となく笑みを浮かべてらいおんさんの背に回って、金色に掛かるタオルに手を触れさせる。




黙って、ふわ、と髪から水分を含む。




揺れる頭が、自分より低いところに在る彼が、くすぐったいように可愛くて、自然と笑みが零れてしまうのだ。


くすくすと笑っても、彼は何も言わずに髪の先を揺らしていた。





もしかして、





そう思ってそっと顔を覗く。




らいおんさんは、きゅっと目を瞑って、気持ちよさそうに揺れていた。





わ、わ。



本当に、何だか、動物みたいなのだ。





眠たいのかな?とまで思わせる。

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