第55話

「――――――拭け。」







湯上り、脱衣所から出たところの廊下にすぐ、らいおんさんの姿が在った。


彼は壁に寄り掛かって座り込み、縁側から覗く満月をじっと見つめていた。




月明りに透ける金色が、



表情の見えない横顔が、




悲しいほど綺麗で。




それから目を離せずにいると、気が付いた彼が立ち上がり、入れ替わりに暖簾を潜っていく。


言葉無く。



あたしはそれを見送った後、辿り辿り、元居た和室を探して戻っていることにした。







和室をやっと捜しあてて、雨戸の開いたままの縁側に、貸してもらった浴衣の膝をついた頃。





背中で襖の開く音を聞き、薄いタオルを髪にかけたままのらいおんさんが傍に寄り。




冒頭の言葉に至る。

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