第52話

――――――――……







「え――…、と、」




あたしは、紅い紅い頬のまま、動くことができなかった。



心臓は、心臓はいつもよりずっと煩かったが、そんなことは気にならなかった。




「ら、」



名を、呼ぼうとする。



なのに、最後まで云えない。




私は。


この気持ちがわからない。




恋とか、愛とかで言えれば良かったのだ。それなのに、云いようのない気持ちを身体が先に憶え始めたから。




息が、苦しい。



逃れられない。





「あ、の。これ、は。」







「…………ご免なさい……。」






「――――?」

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