第51話
『……っ、どうした!?』
――――へ。
両腕で覆った目の隙間から、血相を変えたらいおんさんが傍に寄るのが、スローモーションで眸に映った。
『さおり、具合が悪いのか!?』
彼は腕を掴み込み、強い力で引こうとした。
あたしは瞬時の出来事にそれこそびっくりしすぎて、真っ赤な顔を除けられた腕かららいおんさんに見せることしかできない。
『……顔が、紅い……が、具合が悪いんじゃないのか?』
『ち、ちが』
何だ何だあたしにもこの状況がよく分からないけど取り敢えずらいおんさんに申し訳ない気がする!
悲鳴なんか上げた、から?
というか何よりその悲鳴の原因が自ら急接近してきて、もっと大声で叫んでしまいそうなのですが。
どうすれば。
彼は、その美しい睛でじっとあたしを見つめ、腕を掴む力をそっと緩めた。
腕には、はっきりと、朱い痕が遺された。
らいおんさんはゆっくりと床に膝を着く。けれど彼は大きいので、それでも傍に感じられる。
らいおんさん。
震えた腕で、小さく、弱く、
あたしを抱きしめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます