第51話

『……っ、どうした!?』









――――へ。





両腕で覆った目の隙間から、血相を変えたらいおんさんが傍に寄るのが、スローモーションで眸に映った。





『さおり、具合が悪いのか!?』





彼は腕を掴み込み、強い力で引こうとした。



あたしは瞬時の出来事にそれこそびっくりしすぎて、真っ赤な顔を除けられた腕かららいおんさんに見せることしかできない。





『……顔が、紅い……が、具合が悪いんじゃないのか?』





『ち、ちが』




何だ何だあたしにもこの状況がよく分からないけど取り敢えずらいおんさんに申し訳ない気がする!




悲鳴なんか上げた、から?




というか何よりその悲鳴の原因が自ら急接近してきて、もっと大声で叫んでしまいそうなのですが。



どうすれば。








彼は、その美しい睛でじっとあたしを見つめ、腕を掴む力をそっと緩めた。



腕には、はっきりと、朱い痕が遺された。




らいおんさんはゆっくりと床に膝を着く。けれど彼は大きいので、それでも傍に感じられる。





らいおんさん。




震えた腕で、小さく、弱く、





あたしを抱きしめた。

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