第50話

こく、と頷き返す。するとそれを視線の先に置いていたらいおんさんは、脱衣を置く棚に向かって、自らの服の端に手を添えた。




『あれ、え?らいおんさん?』




彼は難なく自分の下腹部で結ってある着物だか浴衣だかの縞帯に手を掛けている。




『ちょ、え!?』





何して、と出掛けた先、らいおんさんはツンと澄ました顔をこっちに向けて一言。




『入るんじゃないのか?』





そう言った。






『待て待て待て待て』



『どうした?』


『いやいやいやらいおんさんがどうした?』




『……何が?』







何がって何!?





ちょっと待ってどうしようあたしどこからツッコミしていったらいいのか分からないぞ?何でらいおんさんそんな純粋な目でこっちを見るの?あたしが悪いの?らいおんさんのお風呂を邪魔したの?うん?




そんなことをぐるぐる考えているうちに、解きかけた帯から彼の綺麗な肩が覗いていておったまげ、思わずぎゃああああと目を腕で覆い隠した。

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